◆重曹って何だろう? クエン酸って何だろう?
重曹、クエン酸という言葉は知っているけど、正体は何なのか知っていますか?
何でもできる「ものすごい万能選手」のように思われていますが、やはり得意なこと・不得意なことがあります。
具体的な使い方を説明する前に、ちょっとだけ化学の復習でアルカリ性と酸性についてご説明します。
どうしてそんなことが必要なの?という方もいらっしゃるでしょう。
実は重曹は大きくアピールされているため、皆さん大きな期待を持って使い始めます。
でも期待が大きければ大きいほど期待通りの効果が現れないと「あれ?」と思ってしまうことが多いのです。
- 重曹ってどんな汚れでも落ちると思ったのに! ちっともきれいにならない!
- クエン酸と重曹、どんな汚れにどっちを使えばいいの?などなど
重曹には重曹の、クエン酸にはクエン酸の得意な汚れがあり、効率よく効果的に汚れを落とすためには、このアルカリ性と酸性の性質が大きく関わっているのです。
その正体や特長、得意なこと、不得意なことを理解しておくと、うまくいかなかった理由も理解できますし、自分で工夫することができます!
身近な物質のアルカリ性と酸性
ある物質を水に溶かしたとき、その液体がどんな性質を持つのかでアルカリ性と酸性に分類されます。このアルカリ性と酸性をはかるにはリトマス試験紙を使いますね。
覚えていらっしゃいますか?
このリトマス試験紙が赤になるものが酸性。青になるものがアルカリ性です。
またアルカリ性と酸性の強さはpH(ペーハーともいいます)で表します。
次の図で身近にあるものがどれくらいのpHであるのか確認してみましょう。
同じ洗剤でも様々なpHがあります。
これは目的とする汚れと反対の性質を持たせているからなのです。
図の中に汚れにも酸性の汚れとアルカリ性の汚れがあります。
汚れ落としの基本は「中和させること」。
酸性の汚れにはアルカリ性のものを使用する。逆にアルカリ性の汚れには酸性のものを使用すると効果が高いのです。
例えば市販の油汚れ用の洗剤は、pH12の強目のアルカリ性ですから、ひどい油汚れでも溶かして落とすことができるのです。
ちなみに油汚れなどがメインとなる台所洗剤は上のルールからするとアルカリ性になるんじゃないの?と思われるでしょうが、ほとんどの台所洗剤は中性から弱酸性です。
これは食品や食器に使ったり、手(皮膚は弱酸性)で直接触れる頻度が高いため、安全性を最優先に考えられているからなのです。
メインの油汚れに対しては油を溶かす効果のある界面活性剤(かいめんかっせいざい)を多く使用することで対処しています。
※酸性やアルカリ性の度合いが強いものは手荒れの原因となります。また肌の弱い人は中性に近くても肌が荒れてしまう場合があります。ゴム手袋などを使用しましょう。
◆重曹の正体
では本題です。
重曹とは一体なんでしょうか。
化学名 :炭酸水素ナトリウム/重炭酸ソーダ/重曹
化学式 :NaHCO3
重曹の特徴
- 溶かした時の溶液はごく弱いアルカリ性で酸を中和する作用があります(シリンゴル重曹は水に溶けやすくするために粒子を細かくしております)。
- 人体に無害な物質です(胃の中にはいると胃酸と反応して水と塩化ナトリウム(塩)と二酸化炭素になる)です。
ふくらし粉(ベーキングパウダー)の主成分で、胃薬としても古くから使用されています。 - 結晶が丸く粒子が細かいため、研磨作用があります。
- 空気中で安定しているので長期保存ができます。
- 水を軟らかくする軟水作用があります。
- 消臭作用・吸湿作用があります。
- 発泡・膨張作用があります。
重曹が得意な汚れ・苦手な汚れ
- 中和作用:重曹溶液は弱アルカリですから、酸性の汚れの中でも皮脂等の軽い油汚れが得意です。
- 研磨作用:少量の水を混ぜた重曹の粒子は細かく角がなく傷がつきにくいため、ソフトなクレンザーのようにして使えます。
- 発泡作用:水と混ぜて熱を加えることで勢いよく発泡します。その発泡作用で鍋のこげ落としには大きな効果を発揮します。また重曹から変化した炭酸ソーダにつけておくことで、頑固な焦げも柔らかくなって落ちやすくなります。
※炭酸ソーダはアルカリ性が高く、直接手で触れると手荒れを起こす可能性が高くなりますので手袋を使用して下さい。 - ひどい油汚れには重曹単独ではあまり向きませんが、こげ落としと同じように熱することで汚れ落としの前準備をすることが可能です。
- 排水溝のドロドロにはクエン酸との組み合わせで対処します。
- 石けん洗濯をする時には事前に重曹を水に溶かして水を軟水化(ミネラル分の少ない水にする)することで泡立ちをよくする効果があります。(洗濯用の合成洗剤には効果がありません)
- 酸性の悪臭の消臭効果、湿気の吸湿効果があります。
◆クエン酸の正体
クエン酸とはレモン等の柑橘類や梅干しに含まれる「酸っぱい成分」のことです。
化学名:クエン酸
化学式:HOOC・CH2・COH・COOH・CH2COOH
クエン酸の特徴
- 水に溶けやすく水溶液は2%でpH2くらいの酸性になります。(粉末ですので濃度次第でもっと強力にもできます)
- 水を含みやすい性質がありますので、保存には密閉できる容器に入れる必要があります。また長期保存には向きません。
- 無臭です。揮発性がないため掃除をしたところに酸の成分がそのまま残ります。
成分が残ることで雑菌の繁殖を防ぎ、アルカリ性の汚れを予防する働きもありますが、材質がいたむ可能性がある時は、きれいに水で流す・拭き取る・重曹液で中和する等の作業をする必要があります。
クエン酸が得意な汚れ・苦手な汚れ
- クエン酸は酸性ですのでアルカリ性の汚れを落とすことが得意です。
水垢や石けんカス、トイレのアンモニアの汚れ、電気ポットのカルシウムの汚れ等。 - 苦手なのは油汚れ、油脂の汚れ等。
- 重曹と混ぜることで勢いよく発泡させることができます。その発泡作用を利用して排水溝の掃除ができます。
- アルカリ性の悪臭(トイレの悪臭)の消臭ができます。
◆クエン酸の代わりに酢を使うこともできます!
酢はほとんどの家庭にある見慣れた調味料です。
図説にもある通り、酢はクエン酸と同じ酸性で、酢の成分中にもクエン酸が多く含まれるため、クエン酸でできることは大抵酢で代用できます。
違いは独特の香りがあることくらいで、お掃除効果はクエン酸と大差ありません。
「クエン酸って何? よくわからないわ」という方は、ご自宅にある酢でまずは気軽にチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
ただ酢にもお掃除に向く種類、向かない種類があります。
すし酢や米酢のように調味料やうまみ成分が多く含まれているものは、お掃除には向きません。
お掃除には穀物酢を使って下さい。他、ワインビネガーもおすすめです。